にんげんに擬態
夜。
不安は胃袋を食べ物で埋めることでより強まる気がする。
夕飯にもろきゅうもどきを食べた。
みりんを煮切らないで入れたから酒臭くないかと思ったけれど、食べてみるとよく知る味だった。
一生これを食べていれば痩せるのでは。
とかいいながらさやえんどうスナックを食べ、同居の人にすぐバレた。
しょうもない。
食べたものをきちんと消化し、また食べているため、体重は増える一方である。
人のふりをするのは疲れる。
一人暮らしの心地よい適当さに思いを馳せる。
あの頃はダイエットが捗っていたなあ。
夜唸るほど寂しかったことはもう忘れた。
今は、家に他人がいることの安心感と、煩わしさに夢中になっている。
だけど、たまに全部放り捨てて、真の孤独になってやる、と思うときがある。
モスバーガーの怪
脳みそに不安が走ったときに食べることに逃げるのは日常茶飯事だが、味のしないモスバーガーを食べたのは、とても勿体無かったな。
こうしてエンゲル指数が高いから、クレカの明細をきちんと整理しなくては。
出てきたものを食べ終わり、満腹感とともに希死念慮と目を合わせれば合わせるほど、ボロボロと自分の輪郭が失われるように感じる。
金縛りで眼球だけが動くみたいに、今、親指だけが動いている。
この感情との付き合いも十数年を超え、不思議な愛着がある。
いつか、自分に期待も何もしなくなったら、希死念慮について行ってやってもいいと思っている。
部屋の隅で毛布にくるまって震えているより、死んでしまった方がよっぽどいいのかもと思いつつ、死ぬのはまだ怖い。
だから、また今度ね、ばいばいと希死念慮に手を振ったが、いつまでたってもいなくなる気配がないのでモスバーガーを出る。